かぶれ(接触皮膚炎)とは
かぶれの症状
「かぶれ」は、接触皮膚炎(接触性皮膚炎)ともよばれ、なんらかの物質が肌に触れたことで発症する皮膚炎です。
通常、「かぶれの原因物質」が触れた箇所に症状が表れます。
かぶれの主な症状
- かゆみ
- 赤み、ぶつぶつ
- 小さな水ぶくれ
- 腫れ
など、さまざまな症状がでます。
その状態が長期間続くと、皮膚の表面がガサガサやゴワゴワした肌になってしまい、色素沈着も起こる可能性があります。
かぶれの3大原因
かぶれを誘発する原因は、3つに大別されます。
- 刺激性接触皮膚炎
- アレルギー性接触皮膚炎
- 光接触皮膚炎
それぞれの皮膚炎で、炎症が起こる原因が異なります。
まずは診断によってその原因を突き止めることが大切です。
刺激性接触皮膚炎
皮膚に触れる物質の刺激が強いために生じる炎症です。
本来、皮膚にはさまざまな外敵から防御するバリア機能が備わっています。
しかし、強い刺激によってこのバリア機能の許容を超えてしまうことがあります。
刺激性接触皮膚炎の特徴
原因物質に触れたあと、数分で症状が出ることもあります。
原因物質自体がもつ刺激によって起こる疾患のため、アレルギーとは違い誰にでも起こる可能性があります。
原因物質の濃度が低い場合は、複数回触れてしまうことで、次第に症状がでることもありますので注意が必要です。
アレルギー性接触皮膚炎
肌に触れた物質に、アレルギーを持っていた場合、皮膚に炎症を誘発します。
これは原因物質に対して、体の免疫機能が働き、「有害な物質」と誤認してしまうことで起こる現象です。
アレルギー性接触皮膚炎の特徴
アレルギーの成立には2週間ほどの時間を要するのが一般的です。
アレルゲンの種類・濃度・量によっては、半年ほど経過してから成立する方もいらっしゃいます。
いったんアレルギーが成立すると、数時間〜1日程度で症状がではじめます。
※ 稀に3〜7日程度で発症することもあります。
アレルギーのある方のみ表れる疾患で、たとえ同じものに触れても、誰でも同じ症状が起こるわけではありません。
光接触皮膚炎
光アレルギーともよばれます。
原因物質に触れただけでは皮膚炎がおきませんが、触れた部分に光や紫外線が当たることにより症状がでてくる皮膚炎です。
光接触皮膚炎の特徴
原因物質に触れただけでは、炎症は起こりません。
他の皮膚炎と同様に、赤みを伴う発疹やかゆみの症状がでます。
ひどい火傷のような水ぶくれの症状が出る場合もあります。
光接触皮膚炎を起こす可能性のある物質
- 湿布薬や抗炎症薬を含んだ軟膏
- 一部の日焼け止め
- 香水、アロマオイル
などがあげられます。
誘発する原因物質
かぶれの原因となりやすい物質例
植物 | ウルシ、ヤマハゼ、ブタクサ、ドクダミ、イラクサ、イチョウ など |
---|---|
野菜 | 二十日大根、里芋、しそ、セロリ、アスパラガス など |
果物 | 桃、パイナップル、パパイヤ、マンゴー、柑橘類 など |
香辛料 | 辛子、生姜、コショウ、バニラ など |
日用品 | ゴム製品、洗剤、下着、手袋、靴下、シャンプー など |
金属 | ニッケル、マンガン、コバルト、クロム など |
化粧品 | 口紅、アイシャドウ、ファンデーション、毛染め、マニキュア など |
医薬品 | 湿布、目薬、抗生物質、痛み止め など |
化粧品は化粧品を使用した部位だけに皮膚炎を生じ、気づかないで使用していると色素沈着を起こすこともあります。
部位別|かぶれやすい代表的物質
頭部 | シャンプー、育毛剤、染毛剤(ヘアカラー・白髪染め)、ヘアピン |
---|---|
唇・口まわり | 食物、口紅、リップクリーム |
耳 | ピアス、補聴器 |
首 | ネックレス |
胴体 | 下着、ゴム、ベルト、洗剤や柔軟剤 |
外陰部・臀部 | 避妊用薬品、避妊具、外用薬、おむつ |
腕 | 腕時計、ブレスレット |
脚 | 消毒薬、外用薬 |
手 | 接触した物すべて、手袋、洗剤 |
足 | 靴下、靴、抗真菌外用薬 |
わきの下 | デオドラント剤、香水 |
かぶれの予防・対処法
かぶれの予防
1.原因物質との接触を避ける
何よりもまず、原因物質を特定することです。
そして、触れないように注意する必要があります。
なかには原因物質がわからないケースもあると思います。
明確でない場合でも「かぶれのリスクがあるかもしれない」というものは、触れないように注意してください。
それでも触れるリスクを伴う際は、手袋や衣類などを使って、肌を守る工夫が必要です。
2:肌にあったものを着衣する
- 衣服(使用する洗剤)
- アクセサリー
- 化粧品・洗剤
など、私たちが普段の生活で使っているものは、かぶれの発症リスクを伴うものもあります。
素材や成分に注意しながら、自分の体質にあった製品を身に付けるように心がけましょう。
3:肌を清潔に保つ
肌についた汗や汚れなどが、炎症をさらに悪化させることがあります。
たとえば、アクセサリーに含まれる金属は、汗と反応することで炎症を誘発します。
肌は常に清潔な状態を保つように心がけましょう。
汗をかいたときはこまめに拭き取り、可能であればシャワー等で洗い流すのが望ましいです。
洗ったあとの保湿も大切
石鹸等で洗ったあと、肌は油分を失い乾燥しやすい状態にあります。
洗ってすぐに保湿をする習慣を身に付けると、肌荒れを予防することができます。
かぶれの対処法
辛いかゆみの症状に悩まされますが、対処法の鉄則としては、なるべく「かかないこと」が大切です。
かいてしまうことのリスク
症状が悪化し、さらにかゆみを誘発してしまいます。
また、周囲の皮膚にも広がり、治るのに時間がかかります。
我慢できずにかいてしまい、キズから菌が入り込んでしまう場合も少なくありません。
細菌による皮膚の感染症である「とびひ ※」になる可能性があります。
※ とびひは、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)ともよばれます。
かぶれの治療
まず原因物質の特定から
名取つちやま皮ふ科での「かぶれの治療」は、まず患者さんのお話を聞き、原因物質の特定を行うことから始めます。
普段の生活を振り返りながら、何かしら心当たりのあるものがないかどうかを一緒に考えます。
症状が特定の場所に出ている場合は、原因の推測に役立つことがあります(例:片方の手首だけに症状がある → 腕時計による接触皮膚炎 など)。
原因が分かった場合は、できるだけ原因物質に触れないように努力することが重要です。
ただし、原因がはっきりしないこともあります。
そのような場合は、パッチテストというアレルギー物質を調べる検査をすることがあります。
また、原因物質の特定作業と並行して、下記の症状を抑えるための治療を行います。
ステロイド外用薬による治療
炎症やかゆみを抑えるために有用です。軽度の炎症であれば、数日で症状は治ります。
痒みが強い場合は、痒みの症状を抑えるために、抗ヒスタミン薬の飲み薬を処方することがあります。
炎症の範囲が狭い場合は、ガーゼなどを冷やして患部に当てると、比較的症状が落ち着く方もいらっしゃいます。
症状が長引く場合
皮膚の状態をみて治療法を再検討しながら、なるべく負担がかからない方法を選択していきます。