アトピー性皮膚炎とは
かゆみを伴う湿疹を慢性的に繰り返す疾患
アトピー性皮膚炎の症状と特徴
「かゆみを伴う湿疹」を繰り返す
アトピー性皮膚炎とは、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返す疾患です。症状を起こしやすい元々の体質(肌の乾燥しやすい体質、肌のバリア機能が低下している体質、アレルギー体質)があり、そこに様々な刺激が加わって湿疹が起こると考えられています。
アトピー性皮膚炎の主な原因
発症する主な原因
アトピー性皮膚炎の明確な原因は、すべて明らかになっておりません。
しかし、現状の見解としては、先天的要因と後天的要因(様々な環境刺激)があると考えられています。
先天的要因には
- 乾燥肌
- 皮膚のバリア機能障害
- アレルギー体質
があります。
乾燥肌、皮膚のバリア機能障害
皮膚の一番外側にある角層は、皮膚の水分を保持する機能や、外からの刺激因子の皮膚への侵入を防ぐバリアとしての働きがあります。
しかし、アトピー性皮膚炎の方の角層では、セラミドなどの細胞間脂質や天然保湿因子が減少しているため、水分が蒸発しやすく、またアレルゲンや細菌などの刺激が皮膚に侵入しやすい状態になっています。
アレルギー体質
アトピー性皮膚炎の方では、本人または家族が他のアレルギー疾患を患っていることが多く、もともとアレルギーと密接な関係がある免疫物質を生成しやすい体質があると考えられています。
アレルギー体質
- ダニ・ハウスダスト・細菌
- 花粉
- 乾燥汗
- 衣服
など、これらの悪化因子に、さらに汗などの刺激が加わると、アトピー性皮膚炎は悪化する傾向にあります。
また、現代において流行している機能性肌着(吸汗速乾インナーや発熱インナーなど)は、乾燥肌の方だと乾燥を誘発してしまい、肌に触れる刺激などによって皮膚炎を悪化させていることもあります。
年齢別・部位別/ご相談の多いお悩み
乳児期/0~1歳ごろ
生後3ヶ月から半年程度で、乳児アトピーの症状がではじめます。
出やすい部位
- 頭や顔(おでこ、目のまわり、ほお)
- 胸・腹・背中
- 手足
症状
頭や顔は赤くななり、かゆみを伴う小さな赤いブツブツ(発疹)ができます。
その後、ジクジクしてかさぶたがつくことがあります。
ほかの場所(胸、腹、背中、手足)にも、同じような発疹みられます。
成長するにつれて次第に症状は改善することが多いですが、一部の方には成人後もアトピーの症状に悩まされるケースも少なくありません。
幼児期・学童期/2歳~小学生ごろ
出やすい部位
- ひたい・目のまわり
- 耳
- 肘・膝の関節
- からだ全体
症状
ひたいや目のまわりをはじめ、からだ全体がカサカサ肌になる傾向があります。
肘や膝の関節などの関節も乾燥し、曲がる部分の内側が固くゴワゴワになる(苔癬化:たいせんか)のが特徴的です。
耳の付け根がただれて切れる(耳切れ)の症状も多くみられます。
かゆみによって、なかなか寝付けずに、不眠状態に陥るお子さまもいます。
ストレスを抱えやすいため、親御さんは注意してみてあげるようにしてください。
思春期・成人期(中学生ごろ~成人)
大人になっても、アトピーの素因は持続します。
出やすい部位
- 顔や首
- 上半身
- 膝や肘の内側
症状
皮膚全体に乾燥がすすみ、赤くゴワゴワすることが多いです。
とくに顔や首、上半身のほか、膝・肘の内側が固くゴワゴワになる(苔癬化:たいせんか)症状が目だちます。
冬の皮膚
冬は皮膚が乾燥しやすいため、かゆみが悪化する傾向にあります。
夏の皮膚
夏は汗や汚れが皮膚を刺激しやすい環境になります。その刺激で、かゆみを誘発します。
乳児・幼児でアトピーの症状がではじめ、この時期に、症状が軽減する方もいらっしゃいます。
また、逆に思春期を過ぎたあたりから、湿疹の症状に悩まされる方も少なくありません。
アトピー性皮膚炎の診断・治療
アトピー性皮膚炎の診断
まずはアレルゲンの検索と除去から
名取つちやま皮ふ科では、日本皮膚科学会で定められたアトピー性皮膚炎の診断基準に従って診断を行います。
その基準とは
①アトピー素因(アレルギー体質)を持っている。
②痒みがある。
③湿疹がでている。
④症状は左右対称性にでており、額や目の周り、口の周り、耳、首、四肢の関節部、体などにでやすい。
⑤症状が、慢性に繰り返して出現する。
です。
この5つを満たすものを、アトピー性皮膚炎と診断します。
アトピー性皮膚炎の治療
薬物療法による治療
皮膚の炎症を抑えた後に保湿剤でスキンケアを行い、乾燥肌になったり皮膚のバリア機能が低下したりするのを防ぐ、というのがアトピー性皮膚炎治療の大原則になります。
塗り薬では、皮膚の炎症を抑えることが主な役割になります。
塗り薬は対症療法でしかない、と思われるかもしれませんが、「アトピー性皮膚炎の主な原因」のところで記述しましたように、乾燥肌と皮膚のバリア機能障害を防ぐということは、原因の治療にもつながります。
いったん症状が治まった後に繰り返させない、というためにも外用薬によるスキンケアをしっかり行いましょう。
当院では下記の外用薬を用います。
当院で取り扱っている外用薬(塗り薬)
塗り薬では、皮膚の炎症を抑えることが主な役割になります。
皮膚の炎症を抑えた後に保湿剤でスキンケアを行い、乾燥肌になったり皮膚のバリア機能が低下したりするのを防ぐ、というのがアトピー性皮膚炎治療の大原則になります。
塗り薬は対症療法でしかない、と思われるかもしれませんが、「アトピー性皮膚炎の主な原因」のところで記述しましたように、乾燥肌と皮膚のバリア機能障害を防ぐということは、原因の治療にもつながります。いったん症状が治まった後に繰り返させない、というためにも外用薬によるスキンケアをしっかり行いましょう。
当院では下記の外用薬を用います。
- ステロイド軟膏
- タクロリムス軟膏
- 外用JAK阻害薬
- 保湿剤
当院で取り扱っている内服薬
内服薬は、つらいかゆみを抑える効果がある薬や、発疹を抑える効果を期待できる薬などがあります。
- 抗ヒスタミン薬
- シクロスポリン
当院で取り扱っている注射薬
- デュピクセント
当院では、「デュピクセント」という新しいタイプの注射薬も使用します。
デュピクセントは、「IL-4」、「IL-13」という物質の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎の皮膚内部で起きている炎症反応を抑える効果があります。
この効果により、かゆみや湿疹などの症状を改善することが期待できます。
注意事項
デュピクセントの適応があるかどうかは医師が診断して判断します。
デュピクセントの治療希望で受診しても、適応がない場合は治療を受けられないことがあります。
- デュピクセントの投与は、初診時には行えません。
- デュピクセントの説明には15分程度の時間が必要です。
混雑する時間帯に来院しても説明できないことがあります。デュピクセントの説明を希望する場合は電話で予約をしてください。 - 他院でアトピー性皮膚炎の治療を受けていた方でデュピクセントの治療を希望する方は、必ずこれまでの治療経過がわかる紹介状を持参してください。
紹介状がないとデュピクセントの適応があるかどうかの判断ができません。
- 【デュピクセントを投与できる方】
- 今までの治療法で十分な効果が得られない成人のアトピー性皮膚炎の方が使用できます。
Strongクラス以上のステロイド外用薬などで直近の半年以上しっかりとした治療を受けたのにも関わらず、症状が重症な15歳以上の方が使用できます。
ステロイド外用薬をほとんど使用していない方や、直近の半年間に通院治療を受けていない方はデュピクセントを使用できません。
- 妊婦、または妊娠している可能性がある方
- 授乳中の方
- 高齢の方
- 喘息などのアレルギー性疾患をお持ちの方
- 寄生虫感染のある方
- 生ワクチンを接種する予定のある方
スキンケア
皮膚炎を最小限に抑えるには、日頃のスキンケアがとても大切です。
皮膚を清潔に保つことはもちろん、皮膚への刺激を極力抑えながら優しいスキンケアが必要です。
汗をかいたとき
汗はかゆみの症状を誘発します。汗をかいたときは丁寧に拭き取る習慣をつけ、可能であればシャワーで洗い流しましょう。
皮膚についた細菌を洗いながし、シャワー後はすぐに保湿すると効果的です。
保湿剤について
保湿剤によって皮膚のバリア機能を強化し、水分の蒸発を防いでくれます。
アレルゲンの検索
上述した治療を行っても良くならない場合は、悪化因子を調べ、取り除くことが大切です。
アレルギーの原因は年齢により多少違いがあり、乳幼児では食物アレルゲン、それ以降ではダニ、ハウスダストなどの環境アレルゲンが関係していることが多い傾向があります。
アレルゲン検索のために、問診の他に、採血検査やパッチテストを行うことがあります。
精神的ストレスのケア
アトピー性皮膚炎は、日々の生活の中で生じるストレスとの関わりが強いといわれています。
ストレスを抱えることで「かゆみ」等のアトピー症状を誘発しやすいです。
とくに多いのは、職場での人間関係や家族との問題によるストレスがあげられます。
人間関係、仕事、学校などの社会生活での悩みは相談できる人を見つけると良いでしょう。
肉体的ストレスのケア
ストレスは精神的なものだけではなく、肉体的なストレスもアトピー症状を誘発します。
- 栄養バランスの偏った食生活
- 不眠・寝不足
- 過度なアルコール摂取
- 喫煙 など
これらの悪習慣は、皮膚疾患だけではなく、生活習慣病や消化器系疾患の要因にもなります。
生活習慣を見直しながら、規則正しく、健康的な生活を身に付けることが大切です。
子どものアトピー
親御さんへ
小さなお子さまの皮膚症状でお悩みの親御さんはたくさんいらっしゃいます。
乳児・幼児のアトピー症状では、かゆみを伴う発疹のほか、かいて肌を傷つけてしまった「かき傷」に悩まされることが多いです。
適切な治療と日頃の正しいスキンケアによって、かゆみ等の症状は抑えられる場合が多いです。
また、小さなお子さまのアトピーは、成長に伴い自然に落ち着くこともあります。
「どうしたらいいんだろう・・・」と不安を抱える方はたくさんいらっしゃいますが、当院では少しでも安心していただけるように、症状のコントロールをご提案させていただきます。
大人のアトピー
QOL(生活の質)の低下を防ぐために
成人後に発症した後天性のアトピー性皮膚炎は、慢性的に激しい痒みを伴うことも多いとされています。
- かゆみの症状
- かゆみが原因となる睡眠不足
- アトピーであることによるコンプレックス など
さまざまな要因が重なりストレスとなって、アトピーの症状が悪化しやすくなります。
さらにそれがストレスとなることで症状が誘発され、まさに悪循環に陥ります。
結果、QOL(生活の質)が低下してしまう方も少なくありません。
名取つちやま皮ふ科では、適切な薬物療法をもとに、かゆみや炎症を抑える治療が行われます。
また、症状悪化や再発を防止するために、適切なスキンケアを指導させていただきます。
重症の症状の場合、薬物療法を半年以上行ってもアトピー性皮膚炎が改善しない場合もありますので注意が必要です。
その際は、大学病院などと連携を図りながら、症状改善に努めてまいります。